松任谷由美 「日本の恋とユーミンと」

最近の若い年代層は、ユーミンこと松任谷由美を知らないそうです。知人の一人は今年二十歳ですが、もちろんユーミンを知りません。正直驚き、ショックでした。

私の世代は、ユーミンを恋愛教祖の如く崇め奉っていたんです。

私はユーミンとオフコースと共に、青春時代、独身時代を過ごした者です。

ということで、昨年めでたくユーミンの40年にわたる活動のベスト版を購入しました。「日本の恋とユーミンと」。

実に20年以上も久しぶりに、ユーミンを聴きました。もちろん大声で歌いながらです。

ユーミンの歌声は独特です。ご本人が「変な声で…」とおっしゃっていました。確かに聞き慣れなければ、耳につくかもしれません。

ただ、私は歌うことからも、遠ざかっていました。このベストアルバムをユーミンと共に歌ってみて、ユーミンの音域の広さに気付いたのです。このアルバムを歌い続ければ、喉が鍛えられそうに思い、今、せっせと歌っています。確かに効果が出ているようで、私の音域が広がってきている感じです。

さて、歌についてです。

初期のユーミンの歌は、とにかく詩がおしゃれでした。実際には日本のどこにでもある昭和の風景だろうに、パリかロンドンか、あるいは夢の中の景色のように彩られています。今回のアルバムで、ああ、ユーミンだなあと思いました。

有名な「卒業写真」。あの二番の歌詞に、「話しかけるように、揺れる柳の下を通った日さえ今はもう、電車から見るだけ」とあります。さんざめいて通り過ぎる女子学生達を、柳が命あるもののように見守っている、その風景が目に浮かんで、昔から私が好きな一節です。

優れた作詞家はどの人もそうですが、ユーミンは驚くほど感情や風景を切り取ってみせます。

ユーミンに限らず、詩は、表面的には意味のわからないことも多々あります。私は、ただ素敵な詩と旋律が好きで、ユーミンを聴いていました。それが、長い年を生きて経験を重ねた今、聴いてみると、まるきり私の思いをそのまま歌にされているかのようでした。もちろん全ての曲ではありません。が、もしかしてユーミンの大部分の曲は、誰かの思いや記憶を、再現しているのでしょうか。私は呆然としました。

ある男性が新聞の投稿で、「ユーミンは川の、美しい上澄みを詩にしている感じ」と表現していました。その時は、ああそうかも、と半分納得したのですが、今は「あんたは恋愛で大したのを経験してないね。」と思います。

やっぱりユーミンは素晴らしい表現者です。今の若者が、ユーミンを知らないのは、しかたないということもあるでしょう。時代が過ぎゆくのは、どうしようもありません。

ただわたしのような感性の持ち主には、いつまでも側に置いていたい作品群です。

というわけで、私は今も声を張り上げ、訓練を兼ねてCDと共に歌っているのでした。